持病と付き合いながら、前向きに暮らすための心の持ち方
持病があるというのは、ただ体の不調があるというだけではありません。先の見えない不安、「どうして自分が」という思い、思うように動けないもどかしさ――目に見えないところで、たくさんの気持ちを抱えながら毎日を過ごしている方が、たくさんいらっしゃいます。
この記事は、持病を「治す」ための医療情報をお伝えするものではありません。治療や症状については、必ず主治医をはじめとした専門家にご相談ください。ここでお話ししたいのは、病と付き合っていく長い時間の中で、心が少しでも軽くなるような考え方や、自分にやさしくするためのヒントです。読み終えた時、肩の力がほんの少し抜けていたら嬉しいです。
「前向き」を、頑張らなくていい
持病があると、まわりから「前向きにね」「気持ちで負けないで」と言われることがあります。励ましのつもりの言葉でも、つらい時には、かえって心を追い詰めてしまうことがあります。
まず知っておいてほしいのは、いつも前向きでいる必要はないということです。不安な日があっても、落ち込む日があっても、それは弱さではありません。病と向き合いながら毎日を過ごしているだけで、あなたは十分すぎるほど頑張っています。「前向きになれない自分」を責める必要は、まったくないのです。
不安な気持ちと、上手に距離をとる考え方
「今」に意識を戻す
病があると、「これから先どうなるんだろう」と未来の不安に心が引っ張られがちです。けれど、まだ起きていない未来を心配し続けると、心はどんどん消耗してしまいます。不安に飲み込まれそうな時は、「今、この瞬間は大丈夫」と、意識を今ここに戻してみてください。温かい飲み物を味わう、深呼吸をする。そんな小さなことが、心を「今」につなぎとめてくれます。
コントロールできることと、できないことを分ける
病気の進行や検査の結果は、自分の力だけではどうにもできない部分があります。一方で、今日の過ごし方、自分への接し方、頼る相手を選ぶことは、自分で決められます。どうにもならないことに心を費やすより、自分が選べる小さなことに目を向けると、無力感が少しやわらぎます。
他の人と、自分を比べない
「同じ病気でも、あの人は元気そう」「健康な人がうらやましい」――そう感じてしまうのは自然なことです。でも、人それぞれ体の状態も事情も違います。比べて落ち込むより、「昨日の自分」と比べてみてください。今日できたことが一つでもあれば、それは立派な前進です。
日々を少し楽にする、小さな工夫
1. 体調の「波」を受け入れる
持病があると、調子の良い日も悪い日もあります。悪い日に「どうしてできないんだ」と自分を責めると、心まで疲れてしまいます。調子の悪い日は「今日は休む日」と決めて、自分に休む許可を出してあげてください。波があるのは当たり前。それを受け入れることが、長く付き合っていくコツです。
2. 小さな楽しみを、毎日に散りばめる
大きな目標でなくて構いません。好きな音楽を一曲聴く、窓から空を眺める、温かいお茶を飲む。ささやかな楽しみを一日の中にいくつか置いておくと、つらい時間の合間に、ほっとできる瞬間が生まれます。
3. 自分の気持ちを書き留めてみる
不安やもやもやを心の中だけで抱えていると、どんどん大きく感じられます。ノートに今の気持ちを書き出してみると、頭の中が少し整理され、自分が何に不安を感じているのかが見えてきます。誰に見せるものでもないので、思ったままを書いて大丈夫です。
4. 頼ることを、自分に許す
つらさを一人で抱え込む必要はありません。家族や友人に話す、同じ病気の人とつながる、医療者に気持ちを伝える――頼ることは弱さではなく、自分を大切にする行動です。「迷惑をかけたくない」と思うかもしれませんが、あなたが頼ってくれることを、嬉しく思う人はきっといます。
つらい気持ちが続く時は、一人で抱えないで
体の不調だけでなく、気持ちの落ち込みが長く続いたり、眠れない・何も楽しめない・消えてしまいたいと感じるようなことがあれば、それは心がSOSを出しているサインかもしれません。そんな時は、どうか一人で抱え込まないでください。
主治医に心のつらさを伝えることもできますし、各自治体の相談窓口や、こころの健康に関する公的な相談先を頼ることもできます。「こんなことで相談していいのかな」とためらう必要はありません。体のことも心のことも、あなたが助けを求めていいものです。
まとめ――病とともに生きるあなたへ
持病と付き合っていく日々は、決して平坦な道ではありません。良い日も悪い日もあり、不安になる夜もあるでしょう。でも、その中で日々を生きているあなたは、それだけで本当によく頑張っています。
前向きになれない日があっても大丈夫。完璧でなくて大丈夫。自分を責めず、自分にやさしく、できることを一つずつ。それで十分です。今日できることは、ほんの小さなことでかまいません。まずは、今日まで頑張ってきた自分に「お疲れさま」と声をかけてあげてください。
よくある質問
Q. 持病のことで、家族や周囲にどう伝えればいいか悩んでいます。
すべてを一度に伝える必要はありません。「今日は体調が良くない」「少し手を借りたい」など、その時々の状態や必要なことを、短い言葉で伝えるところから始めてみてください。理解してもらえないつらさがある時は、同じ病気の人のコミュニティで気持ちを分かち合うのも支えになります。
Q. 前向きになれない自分が嫌になります。
前向きになれないのは、あなたが弱いからではありません。病と向き合うこと自体が大きな負担で、不安や落ち込みを感じるのは自然な反応です。無理に明るくしようとせず、「今はそういう時期」と、ありのままの自分を受け止めてあげてください。
Q. 不安で夜眠れないことがあります。
不安で眠れない夜が続く時は、まず主治医に相談してみてください。眠れないこと自体が体と心の負担になります。あわせて、寝る前に温かい飲み物を飲む、スマホから少し離れるなど、心を落ち着ける小さな習慣を試してみるのもよいかもしれません。それでもつらい時は、一人で抱えず専門家を頼ってください。